概要
私たちが知らず知らずのうちに行っている「否定」という行為。
しかし、相手のことを思うために否定してしまうと、自己肯定感が持てなくなったり、信頼関係が失われたり、やる気が出にくくなったりするなど、人間関係や日常生活に悪影響を与えてしまう。
本書を読むと、否定しない技術を用いて、より良いコミュニケーションを行うヒントが得られるだろう。
まとめ
否定は悪意のないところに存在する。
たとえば子供の将来を想って「夢を追い続けるより現実を見なさい」と両親が発言するとする。
しかし、上記のような否定は、たとえ悪意が一切なくても、人間関係を悪化させる恐れがある。このケースでは、子どもの自信や自己肯定感がなくなってしまうおそれがあるのだ。
もし、否定せずに人間関係を構築出来たらどのようなメリットがあるだろうか。
たとえば、「自信が持てる」「自己肯定感が上がる」「ポジティブな気持ちが生まれる」などといったメリットが挙げられる。
それでは、メリットを得るためにも、否定しないマインドを作るために何を心がければよいだろうか。
筆者は以下の三つの点を挙げている。
・事実だから否定してもいいという思考はしない
正論は使い方を間違えれば、相手を傷つける凶器になる。
正論を言われた相手がどのような気持ちになるのかを考え、想像することが否定しないマインドを作るための第一歩となる。
・自分は正しいという思考はしない
意見の違いを多様性として認められるかを考える。
「大人の関係性における問題や課題の約70パーセントには、明確な答えは存在しない」と言われている。
そのため、正しいか間違っているかを議論するのではなく、目的を共有することを第一に意見を交わすことが大事である。
・過剰な期待はしない
仮に部下や同僚に期待して、うまくいかなかったとしても、その人なりに精一杯やっているという事実を認めることも大事である。
そして、本書では否定しない技術についても述べられている。
・イエス・エモーション話法
相手を認め、その後自分の感情を表現する。
・能動的に黙ることを覚える
言葉を返す前に、いったん黙って会話のブレーキを踏む。
・相手の言葉をナレーションする
「~ということを考えているんですね」などということにより、相手が「自分の言葉をちゃんと聞いてくれた」と思うようにする。
・「かもしれない」をつける
断定的に決めつけるのではなく、語尾にかもしれないと置き、一旦思い込みを捨てる。
・さすが~と加える
さすが~と会話に付け加えることにより、会話がよりスムーズに進みやすくなる。
上記のポイントを取り入れると、否定する気持ちが少しずつ減っていくだろう。
ではもし、誰かを否定してしまったらどうすればよいだろうか。
筆者は本書で、万一否定してしまったケースについても触れている。
一つの例として、「自分が否定してしまった場面」など、客観的な事実だけに集中して、丁寧に振り返ってみることを挙げている。(ここに主観や感情は入れないほうが良い)
振り返る際、以下のポイントを抑えると良い。
・何が起こったか
・何はうまくいったか
・何がうまくいかなかったか
・相手をなぜ否定してしまったか
↑をそれぞれ振り返ると、答えがおのずと見えてくるかもしれない。
そのほか本書では、「6行会話メゾット」「オンザチェアーメゾット」「相手の話を引き出す合いの手フレーズ」「強い意見を伝える会話術」「会話を建設的にする質問法」など、否定しない習慣にかかわるメゾットが沢山挙げられている。
気になる方はぜひ、本書を読んでみることをお勧めする。
感想
昨今のSNS、現実社会問わず「~すべきだ」「正論こそ正義」「間違いは徹底的に潰そう」と言わんばかりの人間関係に辟易してきた方も多いのではないだろうか。
自分を棚に上げて正論を述べる人間のなんと多いことか。そのように思われる方も多いだろう。決めつけもまた、同じである。
私もそのような人間の一人だった。「自分はそんなに正しいのか?」「べきべき言うが本当にほかの選択肢はないのか」私は常に自分の意見が本当に正しいのか疑問視しているタイプの人間だったので(流石に私のように度が過ぎてしまうのも問題だが)中々考えを理解されずに過ごしてきた。
また、自分は考えすぎなのではないかと悩む日も多かった。
そんな中偶々この本に巡りあい、同じような考え方を持っている方がいらっしゃるのだと感動した記憶がある。
まさに日々心がけている「他人の意見を否定しない」「正論は時として凶器になる」等の否定しないためのマインドを、をアドバイスとして取り入れていたからだ。
かくいう自分も、他者を否定こそしないものの視野が狭くなることは多い。なぜなら主観的になり過ぎてしまうからだろう。
そこで本著の「別の視点から物事を観察する」行動を心がけてみたいと思う。
ただ、以上のことを心がけても、人間関係はそううまくいかないこともある。
今後も本著で述べられているポイントを心がけて、少しずつより良い人間関係を築いていきたい。